中国語テキスト
不尚贤, 使民不争; 不贵难得之货, 使民不为盗; 不见可欲, 使民心不乱。
是以圣人之治, 虚其心, 实其腹; 弱其志, 强其骨。
常使民无知无欲, 使夫知者不敢为也。
为无为, 则无不治。
翻訳
賢者を尊ばず、民の争いを防ぐ。
得難き貨を貴ばず、民の盗みを防ぐ。
欲するべきものを見せず、民の心の乱れを防ぐ。
このため、聖人が治めるとき、その心を虚しゅうし、その腹を実らせ、その志を弱め、その骨を強くする。
常に民を無知無欲たらしめ、知者が為すことを敢えてしないようにする。
無為を行い、則ち治まらぬことはない。
注釈
苏子由 : 圣人 「聖人」を高く評価すれば、民は同じように遇されないことを恥じ、争いに至る。得難き貨 (难得之货 ) を貴べば、民はそれを持たないことを嘆き、盗みに至る。欲するべきもの (可欲 ) を見せれば、民はそれを持たない不幸を感じ、乱れに至る。天下の人はこの三つが災いであることを知っているが、完全に捨て去るのは愚かである。圣人 は常に賢者を用いるが、決して尊ばない。得難き貨を拒まないが、貴ばない。欲するべきものを捨てない(C:枯木や死灰のように無感動ではない)が、ただ見せないだけである。
E: 上古の圣人 は賢者を用いたが、決して尊ばなかった。賢者はその職に就いても、栄誉とは考えなかった。その労苦を負ったが、決して利益を得なかった。栄誉も利益もないものを、民がなぜ争うだろうか。後世、賢者はその名声の実を享受し、衆人は彼らを尊び模倣した。人の心に野心が生じ、初めて強い争いの精神が現れた。このため、圣人 を尊ばなければ、民の争いを防ぐことができる。
E: 上古の聖王は常に富を用いて民を養ったが、商いを通じて交易を容易にする目的は、民が衣食を得る手助けだけであった。他の種類の物を、圣人 がなぜ貴ぶだろうか。珍しい物 (奇货 ) を貴ばず、日常の物を軽んじない。無益なことをせず、真に有益なものを害することを恐れた。民に衣食の十分な手段を与えれば、盗みや略奪は根絶される。このため、得難き貨 (难得之货 ) を貴ばなければ、民の盗みを防ぐことができる。
E: 人の心 (心 ) は自然に静かである。乱れて通常の状態を失うのは、欲するべきもの (可欲 ) を見るからである。このため、欲するべきものを見せなければ、心の乱れを防ぐことができる。
前の段落で、「尊ばない」(不尚 )、「貴ばない」(不贵 ) という言葉は、「見ない」(不见 ) という言葉が王に関係することを示している。この意味は多くの注釈に見られるが、谢朏 (E) は見逃しているようだ。しかし、D版によれば、「民」(民 ) の文字を「心」(心 ) の前に加える必要がある:「民の心の乱れを防ぐ」。
逆にEの注釈に従えば、文字通り訳さなければならない:Si homo non aspiciat desiderabilia, efficiet ut (suam) cor non turbetur.
可欲 「desiderabilia」について、Cは名声 (名 ) と利益 (利 ) を意味すると考える。Aは淫らな音楽 (淫声 ) と女性の美 (美色 ) を指すと信じている。
E: 圣人 が天下を治めるとき、富と栄誉の道を塞ぎ (塞兑 )、贅沢品を遠ざける (闭利 )。これにより、民に低い欲望や貪欲を抑え、原初の純粋さを保つことを教える。静かで雑念なく、圣人 の心は虚 (虚 ) である。このため、その精神 (神 ) と生命力 (气 ) は内に保たれ、腹 (腹 ) は満たされる。(これらの言葉は比喩的に理解すべきである。)
A: 貪欲 (欲 ) と感覚的欲望を追い出し、心を乱す可能性のあるものを遠ざける。同上。「腹を実らせる」とは、道 を胸に抱き、五神 (五神 ) を保つことである。
E: 謙虚 (柔弱 ) で控えめであり、絶対的無為 (无为 ) の中にいる。すると、その意志は弱まる。
このため、その体力は衰えず、骨は強くなる。
A: 柔 (柔 ) で謙虚 (弱 ) になり、他人に命令しようとしない。
E: 人の心 (心 ) は自然に無知 (无知 ) で無欲 (无欲 ) であるが、万物との接触がそれを堕落させ、原初の純粋さを乱す。そして、多くの知識を求め、多くの欲望に身を委ねる。 「民を無知無欲たらしめる」とは、単に原初の状態に戻すことを意味する。
E: 知識のある者 (有知 ) は天下を乱す困難を作り出すことを好む。しかし、人が有為 (有为 ) の害と無為 (无为 ) の利を知れば、恐れを抱き、乱暴な行動を敢えてしない。
人々に平穏をもたらす最良の方法は、无为 である。このため、无为 を行えば(これは王について言われる)、すべてがよく治まる。